今回は無事に乗り切ろうか、習慣流産
流産を3回以上繰り返した場合を「習慣流産」 と言います (死産や早期新生児 死亡は含めません)。妊娠全体の1%未満で発生すると言われています。
1回目流産と2回目流産の間に何の相関関係もない場合、2回目流産確率は約2.3%で、3回目流産する確率は約0.34%程度に過ぎないといけません。
しかし、実際には3回連続で流産になる確率が1%より少し低いため、1回目、2回目、3回目の流産が完全に独立したのではなく、ある程度の相関関係があると考えるしかありません。
それで専門家たちは繰り返し流産を発生させる原因が別にあると考え、それに対する研究も着実に進めました。

研究によって原因別の割合が少しずつ違いますが、平均して全体の半分を占めるのが「原因不明」です。
検査をしても正確な原因がわからないということです。もちろん、これには流産の最も重要な原因となる年齢が含まれています。

原因不明に含まれる女性の年齢が高くなるにつれて、流産率も高くなります。40歳以上は流産率がほぼ50%で、45歳以上ではほとんど流産することが分かりました。これは、年齢が高いほど卵子の染色体や遺伝子に問題が生じる可能性が高いためです。
それ以外の遺産の他の原因としては,「子宮奇形」,「内分泌異常」,「抗リン脂質抗体症候群」(APS),「特発性血栓症」,「間違った生活習慣」があります。
1)子宮奇形
1988年米国不妊協会(The American Fertility Society-現米国生殖医学会)で分類した子宮奇形の種類です。独立した子宮が2つあり、子宮口も2つ存在する「重複子宮」(Uterine didelphys),子宮の形は正常でも内膣に壁がある「中隔子宮」(Septate uterus),1つの子宮の中に2つの内膣が存在、子宮口も2つある「双角双頸子宮」(Bicornuate uterus)などでは流産率が増加します。
子宮奇形の検査
婦人科健診や妊娠初診などで、内診(経腟的診察)や超音波検査で偶然見つかることが多い疾患です。子宮卵管造影、子宮鏡、MRI検査を併用することで、どのような部分の異常であるかが分かります。最近では3D超音波検査の解像度がよくなっていますので、3D超音波検査も行います。
子宮奇形の治療
流産の原因になる子宮形態異常中に特に、中隔子宮は流産率が高いといわれています。手術療法には開腹手術と内視鏡手術があります。内視鏡手術は低侵襲で美容的にも優れ、術後の社会復帰も早いことから、現在は内視鏡手術が主流となっています。
子宮鏡下中隔切除術は子宮内に細いカメラ(子宮鏡)を挿入し、子宮内腔を観察しながら中隔を電気メスで切除する方法です。手術は約1時間で終了し、術後の経過が順調であれば手術翌日には退院できます。術後の経過にもよりますが、術後約3か月で妊娠許可となります。
2)内分泌異常
流産の原因となる内分泌異常は「甲状腺」と「糖尿病」です。妊娠初期の血糖値が高い糖尿病の人は、流産率が高いことが分かっています。また、胎児の奇形を引き起こすこともあるので、妊娠前から血糖値をコントロールし、計画的に妊娠することが大切です。
甲状腺ホルモンの分泌異常では、甲状腺ホルモンの分泌が多すぎる甲状腺機能亢進(こうしん)症、分泌が少なすぎる甲状腺機能低下症があり、こうした状態が妊娠や流産に影響している場合があります。潜在性甲状腺機能低下症でも流産の原因になることがあるので、TSHの一般的な上限は4.9(μIU/ml)ですが、妊娠を希望する場合は2.5(μIU/ml)以下にすることが勧められています。
内分泌異常の検査と治療
糖尿病や甲状腺疾患は、臨床症状や血液検査で診断できます。糖尿病の女性は必要と判断されれば経口血糖降下剤を使用できますが、いったん妊娠が確認されればインスリン注射治療を通じて血糖値を調節することができます。また、甲状腺機能低下症の女性の場合、 不足している甲状腺ホルモンを補う薬(甲状腺ホルモン薬)を服用します。
3)抗リン脂質抗体症候群(APS)と特発性血栓症
抗リン脂質抗体症候群(anti-phospholipid antibody syndrome:APS)とは抗リン脂質抗体という自己抗体が原因となって、動脈や静脈の血が固まる血栓症や習慣性流産などの妊娠合併症を発症する病気です。簡単に言えば血栓の危険性を高める疾患です。
妊娠初期にすでに血栓の危険性が高まった状態で抗リン脂質抗体が存在すると、血栓の危険性がさらに高くなります。妊娠初期に血流に形成された血栓で胎児への血流が遮断され、流産の危険性が高まるのです。
抗リン脂質抗体症候群の他にもアンチトロンビン III(ATIII)欠乏、Cタンパク質、Sタンパク質の欠乏のような先天性血栓性向症も血栓の危険性を非常に増加させ流産の危険性を高める原因になります。
抗リン脂質抗体症候群の治療
抗リン脂質抗体症候群と診断された場合、妊娠初期から低用量アスピリン内服(小児用バファリン1もしくはバイアスピリン)とヘパリン注射を開始し血栓の形成を予防します。
これの低用量アスピリンは解熱剤として使用される高容量のアスピリンではないことに注意してください。
抗リン脂質抗体症候群の国際学会の診断基準を満たす場合には、抗リン脂質抗体症候群合併妊娠の適用によって妊娠中のヘパリン自己注射が保険適用されています。
4)染色体異常
夫婦の染色体または流産した胎児の組織で染色体検査を通じて染色体の異常があるか確認できます。胎児のダウン症候群として知られる21トリソミー、エドワーズ症候群として知られる18トリソミ, X染色体の全体または一部の欠失に起因した疾患ターナー症候群(TS),そして16番染色体のトリソミなどは習慣流産と関連があることが分かりました。
しかし、ほとんどの染色体異常は遺伝的な要因よりは突然変異によって発生するので、夫婦の染色体に異常がないからといって、次の妊娠の胎児の染色体に異常がないということを意味するものではありません。特に妊婦の年齢が高いほど、分裂過程で突然変異による染色体の異常が発生する確率が高くなります。
もちろん流産した胎児の染色体に異常があったとしても、次の妊娠時に胎児の染色体に異常がある確率は15%程度です。そのため、必ずしも夫婦または流産した胎児の染色体検査を行う必要はありません。でも若い女性が繰り返し流産したら、染色体検査をしてみるといいですよ。
着床前診断
着床前診断(PGD)は、体外受精させた受精卵が細胞分裂し「胚」となった段階で検査し、遺伝子や染色体の異常がない可能性が高い胚だけを子宮に戻す医療行為のことです。だれでも受けることができるわけではなく、流産を繰り返す場合など一定の条件をクリアする必要があります。
着床前診断を受けられる条件は、ご夫婦のどちらかが遺伝子変異や染色体異常を持っており、重い病気が子どもに遺伝する可能性がある場合,ご夫婦のどちらかの染色体異常が原因で流産を繰り返している可能性がある場合に可能です。
最後に、習慣流産の診断と治療方法を1つの表にまとめながら終わります。
