PCOSは治る? 多嚢胞性卵巣症候群との付き合い方
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は、一度治療すれば完全に治る病気というより、長期的に付き合っていく体質・疾患として考えられています。ただし、症状や将来の健康リスクは適切な方法で十分にコントロールできます。PCOSの症状は人によって異なるため、月経不順、妊娠希望、にきび・多毛、代謝の問題など、その時に困っていることに合わせて治療します。1. 月経不順・月経回数が少ない場合PCOSでは排卵が不規則になったり、排卵しない周期が生じたりするため、月経の間隔が長くなったり不正出血が起こったりすることがあります。長期間にわたって月経がほとんどない状態が続くと、子宮内膜がプロゲステロンの作用を十分に受けず、子宮内膜増殖症のリスクが高くなることがあります。現在妊娠を希望していない場合には、月経の管理やにきび・多毛の改善を目的として低用量ピルなどの配合経口避妊薬が使用されることがあります。また、子宮内膜を保護する目的で黄体ホルモン製剤を用いる場合もあります。2. 生活習慣と体重管理バランスのよい食事、運動、十分な睡眠などの健康的な生活習慣は、体重にかかわらずPCOSのすべての人にとって大切です。体重が高めの場合には、体重増加を防いだり無理のない範囲で減量したりすることで、代謝状態や月経・排卵が改善することがあります。一方、すでに適正体重の場合には減量する必要はなく、健康的な体重を維持することが目標になります。3. メトホルミンメトホルミンはインスリンの働きを改善する薬で、インスリン抵抗性や糖代謝異常など代謝リスクがある場合に検討されることがあります。人によっては月経周期の改善にも役立ちますが、PCOSのすべての人に使う「排卵誘発薬」というわけではありません。4. 妊娠を希望している場合排卵が不規則または起こらないことが妊娠しにくさの原因になっている場合は、排卵誘発治療を検討します。ほかに不妊原因がないPCOSの無排卵性不妊では、現在の国際的な指針ではレトロゾールが第一選択薬として推奨されています。治療への反応や地域の医療事情に応じてほかの薬や治療法を選択することもあります。5. にきびや多毛が気になる場合妊娠を希望していない場合には、配合経口避妊薬がにきびや多毛の改善に役立つことがあります。必要に応じて皮膚科治療や脱毛などを組み合わせることもあります。ほかの治療で十分な効果が得られない場合には抗アンドロゲン薬が検討されることもありますが、胎児への影響がある薬もあるため確実な避妊が必要です。6. 将来の代謝リスクにも注意PCOSでは、耐糖能異常、2型糖尿病、脂質異常などのリスクが高くなります。これは体重が正常範囲の人でもみられることがあります。診断時には血糖状態や脂質などを確認し、その後も個人のリスクに応じて定期的にチェックすることが勧められます。血圧も定期的に確認しましょう。治療はライフステージによって変わりますPCOSにすべての人共通の治療法があるわけではありません。月経を整えたいのか、妊娠したいのか、皮膚症状を改善したいのか、代謝リスクを管理したいのかによって治療は変わります。「完全に治す」というより、その時々に必要な症状や健康リスクを上手に管理していくことがPCOS治療の基本です。